サンスクリット語入門 : 大乗経典を対話による文法解説で読む
本書は、サンスクリット語で仏教経典に触れてみたいと願う方々のために編まれました。従来のサンスクリット語入門書の多くは、古典語としての完璧な文法体系の理解を第一の目的としており、最初から詳細な音韻規則や連声(サンディ)の説明から始まっていました。確かにそれらの知識は、サンスクリット語の習得において不可欠なものです。しかし、そのようなアプローチは、多くの学習者にとって最初の障壁となってきたのも事実です。
本書は、この従来の学習方法を見直し、より実践的なアプローチを採用しました。具体的には、般若心経や金剛般若経、華厳経、そして唯識など、実際の仏教経典を教材として使用しながら、必要な文法事項を学んでいく方法を採っています。
ちなみに、サンスクリット語の学習者の全てが研究者を目指すわけではありません、多くの学習者にとって第一の目的は、仏教の経典をサンスクリット語で読んでみたい、という素直な願いのはずです。本書はそうした願いの手助になればと思います。
また、本書は単なる文法解説にとどまらず、空性や唯識といった仏教の哲学的な考察にも触れることで、言葉の背後にある深い思想的意味についても理解を深められるよう工夫しました。
さらに先生と生徒の対話形式を採用することで、学習者の疑問に即した説明を心がけている点です。文法事項、特に動詞の体系については基本的なところしか触れていませんが、その代わり、経典に現れる一つ一つの単語について、丁寧な解説を加えています。また、デーヴァナーガリー文字については、できるだけローマ字転写と併記し、さらに発音をカタカナで示すことで、初学者の理解を助けるよう工夫しました。
もちろん、発音規則や連声の理解は重要です。しかし、それらは実際の読解の過程で、必要に応じて学んでいけば十分なのです。 本書の学習方法により、文法規則の暗記に終始することなく、古代インドの思想や文化に触れることで、現代を生きる私たちの視野も広がっていくはずです。
本書が、サンスクリット語学習の新しい扉を開く一助となれば幸いです。→ご購入
コメント