池田一(いけだいち)アースアート三部作

池田一アースアート

TPAFの出版物のうち、もっとも数が多いのはアース・アーチスト・池田一(いけだいち)の本である。

池田一とは?

池田 一(いけだいち)日本の環境アーティスト、アース・アーティスト

大阪生まれ。
京都大学工学部大学院卒。地球環境問題、特に水に関する問題と強く結びついたアートワークを現在までブラジル(サンパウロ)、ニューヨーク、カナダ(バーリントン)、イタリア(南チロル)、ファンランド(ポリ)、インド(デリー)、ノルウエー(オスロ)シンガポール、インドネシア(ジャカルタ)、台湾、東京、鹿児島(枕崎、屋久島)、熊本(阿蘇)など世界100箇所以上で展開し、内外で高い評価を受けている。
特に、1991 年、第21 回サンパウロ・ビエンナーレで池田一は特別招待アーティストとして「Floating Earth ( 漂う地球)というインスタレーションとパフォーマンスを行い、日本人で初めてメイン・ステージを担当(ちなみにその前年度メインステージはヨーゼフ・ボイスであった)。
1995 年、国連50 周年記念アートカレンダーではクリストやイリア・カバコフらと共に「世界の12 人のアーティスト」に選抜された。
2008 年5 月、ニューヨークの国連本部で行われた環境セミナーでは東・東南アジア、オセアニア地域の代表として「世界の7 人の1人」として選抜され、環境アートプロジェクトからの提案を行う。
2012 年、東京都の要請で上野公園不忍池全体を使った環境アートを実現。不忍池の設置作業には年齢・職業・国籍を超えた600 人のボランティアが参加。1 ヵ月間の展示に約100 万人もが訪れたという報告もある。
ミネソタ大学出版局が刊行した「アースアートの倫理 The Ethics of Earth Art」は、1960 年代から制作されたアースワークやランドアートの約60年間の「自然とアート」の歴史をまとめた本であるが、著者のAmanda Boetzkes は、リチャードセラ、ロバート・スミッソン、ジェームス・タレル、そして結論の章として池田一を取り上げている。そこでは「地球に倫理的に向き合うこと」の重要性を唱え「標準的なアートの歴史では、初期のランドアートやアースワークから、大阪出身のアーティスト・池田一らの環境アートへのシフトについて言及するだろう」と書いている。

In 2015, the festival “Merano Spring” will take place in Merano for the first time. As part of this festival, selected international artists realize land art installations in Merano and the surrounding area. In the gardens of Trauttmansdorff Castle, the water lily pond became a work surface for the Japanese artist Ichi Ikeda. Step by step, his latest work “Water Blooming” was created here.

2015年、「メラーノの春」フェスティバルがメラーノで初めて開催されます。このフェスティバルの一環として、選ばれた国際的なアーティストが、メラノとその周辺地域でランドアートインスタレーションを実現した。トラウトマンスドルフ城の庭園では、睡蓮の池が日本人アーティスト池田一の仕事場となった。ここで一歩一歩、最新作「Water Blooming」が生み出された。

 

 池田一(いけだいち)アース・アート三部作

 

このうち、ERT ART MANUAL (アースアートのトリセツ)」クラウド・ファンディングで、多くの人たちの支援によって実現した。以下。

https://a-port.asahi.com/projects/earth-art/
https://a-port.asahi.com/aport/column/detail/204/

この三部作がどのようなものか、ERT ART MANUAL (アースアートのトリセツ)の冒頭で、池田一自身が語っている。

きしみ音が日増しに増大する。 空を見上げると、異常気象の連なり。 山に近寄ると、集中豪雨、洪水、山崩れ。 海に目をやると、マイクロ・プラスティックの汚染の流れ。 大地に立つと、巨大地震と、行き場がない。 自然環境から離れて、人の営みに身をよせると、 きしみ音は体の中にまで侵入してくる。 分断、差別、そして他人が我が物顔に内にのさばる。 地球環境の危機は、外に内に広がる一方 —。

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Q: この本のテーマは、「地球環境の危機に立ち向かう!」と言うことですがー。政治 1 や経済を動かす権力構造から見放された、普通の人にとって、何が今出来るのかー。

ただ諦観に追いやられて、毎日が窒息気味では困りもんだ。ゆったりと吸う酸素が必 要なんです。アートには、何か未来を開く予感がするので、これは共に考える、そし て行動する必要がある。あなたにとって、アートの可能性とは、何ですか?

ICHI: 私が出すのは、答えではない。政治や経済が遠くにあって、思うに任せ ない、そんな日常的な実感の中で、共に考えるキッカケというか、場が欲しい。 生まれたての赤ん坊は、まだ格差社会で分断されてない、平等な存在ですよ。 そんなフィールドがそばに現前して、誰でもが立ち入り可能な、そんな場所が 必要なんです。そこに、アートの役割があります。

ICHI: 地球環境というフィールドは、自分の外の遠くにあると思っている人が 少なくないでしょう。そこで、地球儀とか世界地図を、ひとまずしまって欲し い。最近のニュースでは、ブラジルの南東部で鉱山のダムが決壊して、川が赤 褐色の濁流と化して、犠牲者が増大した。これは、自然災害でも、単に事故で 片付けるわけにはいかない。原因はもっと根深い、格差と貧困による環境条件 が根っこにある。地球環境というのは、自然環境と人間環境とが絡み合った問 題で、地球儀がなければ、地球の裏側の惨事も、ごく身近なことに思えてくる。 地球環境の危機というのは、一人一人にとって、ものすごく身近な、そして誰 もが平等な視点で考えなけれならない問題になってきた。権威や利害から自由 である、縛られない、本来のアートのフィールドと重なるんです。

ICHI: 誤解しないでください、何もアート全般のことを言ってるのではない。 「地球環境の危機に立ち向かう」ことの出来るアートのフィールドがあるわけ で、それがアースアートというフィールドです。自然環境と人間環境の交差点

Q:かなり前から、ギャラリーや美術館を飛び出して、砂漠や草原といった自然の 中でのアートはありましたね、ランドアートとかアースワークとか言ってー。しか し、それらは大きな動きにはならなかった。「地球環境に立ち向かうアースアート」 は、何が違うのか、いっしょに見てとることが重要でしょう。どうですか?

ICHI: 参考になりますよ、この本は実に先見的で刺激的だ。米国のミネソタ大 学出版局から出版された『アースアートの倫理学』という本です。そうです、 1960 年代に、マンハッタンから飛び出して、自然環境の真っ只中で、大掛か りなアートワークを展開した。それから、60年が経ったいま、「アースアート」 の視点で、その歴史を総括した、非常に貴重な書物です。要約すると、

自然環境を人間本位な目で加工できるとした時代から、地球環境問題がクロー ズアップされてきて、当然「自然と人間の関係」のあり方を提案するアートも 変わってきた。そして、この本の結章としては、「地球に倫理的に向き合うこと」 となるわけで、その代表的なアーティストが、池田一だと論じている。その書 物の評者は、ズバリ断言してます。「標準的なアートの歴史では、1960 年代の 初期のランドアートやアースワークから、大阪出身のアーティスト・池田一ら のエコ・アートへのシフトについて、記述するだろう」、と。実は、アースア トのリーディング・アーティストは、太平洋を隔てた場所にいるんですよ。

ICHI: なぜだ、と思います? 一言で言えば、水のアーティストですよ。水を表 現メディアとして使ってる人は、世界的に珍しい。どうしてかって? それは、 手に負えない、人間にとって制御不能なものだからですよ。土、樹木、石、金 属類など、人間は思うように加工してきた歴史がある。どこまでも、人間本位 のアートなんですよ。それに対して、水は制御出来ない分だけ、自然と人間の 共生のあり方に向き合うことになる。これは、全く新しい文化観でしょう、共 生の未来に向き合ってるんですから。

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